ということで、以下は「目覚め」1(6)です。
この直前まではこちら。
※4/20 一部修正。
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「信じられんな」
ジアンはラーガットの話を一刀両断した。
「うわあ、容赦ない。ひどいなジアン」
「ひどくありません。こんなめちゃくちゃな話を信じられますか」
長い話をしたことからくる疲れを感じつつ、ラーガットはしかめ面の術師の言葉に「そうだよなあ」などと内心大きく頷いていた。表には出せなかったが。
ステーレットについてはシェルプスや禁足地云々のことを除いて話した。昨夜警官に話したのとほぼ同じだ。
友人の親戚の子が何故か家に置いていかれて、その子を巡って襲撃されたり追われたり。そんなこと、客観的に考えれば信じられる話ではないと思う。
しかし、
「私はそんなこともあるのか、と思ったけど?」
館の主人はそう言った。従者の溜め息が痛々しく響く。
ラーガットとしては複雑な気分だ。信じてもらわなければ困るのだけれど、こうあっさり信じてしまうこの人は大丈夫なんだろうか。このジアンって人も苦労するなあ、などと思ってしまうのは、おそらく自分が一番この出来事を信じられずにいるからだろう。
「あなたは黙っててください」
「そういうわけにはいかない。私の客だよ?」
「この話は私の領分です」
「うん、それはそうだね」
グレーンはあっさりと頷き、発言権をジアンに回した。何かを疑っている様子で、ジアンは口を開く。
「百歩譲ってその話を信じたとしてだ、あんな解呪結界を展開しておく必要はなかっただろう」
「……それは、その、撹乱のために必要で。後のことを考えて念には念を入れて、というか……」
シェルプスのことなど納得いくように話すことは難しい。深く聞かれたくはないところだが、うまく話すこともできず、少し言葉が弱くなる。
表情から真偽を見定めようとでもいうのか、男は険しい視線でラーガットを見ていたが、やがてフン、と鼻を鳴らした。
「お前の解呪結界で、この館の結護が吹き飛ばされかけた。どれだけ修復に手間がかかったと思う?」
「あー……それは、すいません」
ジアンというこの男の不機嫌の理由がようやく理解できた。館の結護が壊されたことで、修復に追われていたのだろう。吹き飛ばされかけたというのはずいぶん大げさな表現だとは思うが。そう考えた上で男の顔を見ればどこか疲れたような表情でもあり、ラーガットとしては立場の弱さもあって下手に出るしかない。
「そんなにおおごとにしなくたっていいだろうに、ジアンは大げさだなあ」
「……グレーン様。結護の修復にどれだけ手間がかかったか知って、そうおっしゃるんですか?」
どこかのんきな主人はバツが悪そうに目をそらしたが、ラーガットはある程度ジアンの苦労を想像できる。館の結護をどう構成するかなど考えてみたことすらないが、相当に工夫の凝らされた苦労の一品であるのは間違いない。自分につけられた腕輪は、まかり間違ってもう一度結護が壊されたりすることのないように、という対策なのだろう。一応それで納得はいく。
(──ひっかかるところもあるんだけどな)
そんな大層な結護が必要なこの館は一体何か、ということだ。館の結護となると事例をいくつか知ってはいるが──
ラーガットがそれについて思考を巡らせる前に、ジアンが口を開いた。
「そういうわけだ、また壊されてはたまらないのでね、しばらくはその腕輪を外すわけにはいかない」
「まあ、仕方がないですね……っ」
ラーガットはつい肩をすくめ、それと同時に全身に痛みが走り、顔が歪んだ。うずくまることも出来ずにそのまま固まる。グレーンが不思議そうに首を傾げた。
「どうしたんだい?」
「……全然動かないから何かおかしいとは思っていたが。術の反動で身体がやられたか? それほどのものとなると、転移したというのもあながち嘘ではないのか」
冷静に分析するジアンの声を遠くに聞いた気がした。と、肩に手をかけられて上半身を布団に押しつけられた。思わず悲鳴を上げたが声にならない。
「酷い痛みだろうが、起きたまま動けない方が辛いだろう、寝ていろ」
「医者を呼んだ方が良くないかい?」
「今夜はあいつが帰ってきますよ。そうしたら診させればいいでしょう」
「でも、ものすごく痛そうじゃないか」
「術師に必要な痛みですよ、これは」
ラーガットは主従の声を聞きながら、激痛のあまり思考を放棄した。
(今度こそ2へ続く)
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そのうち1は上の部分を入れて更新しますね。
さて、2は館の人たちの話が進みます。ラーガットはしばらく使い物になりませんから(ひどい扱いだな)。
グレーン周辺が先かジアンの動向が先か。もしかしてジアンだけか。
大穴で、起きた妹視点ってのもあるんですが(笑)。
ストックがまたゼロになったので、しばしお待ちを。